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第256話 

松本若子は静かに言った。「この世に完璧な人なんていない。誰しも欠点があって、私もたくさんの過ちを犯してきた。どうであれ、私たちはもう離婚したんだから、これからはお互い自分の人生を大切にしていけばいい。もう二度と関わり合うことはないようにしましょう。あなたのご両親のようにはなりたくないわ」

彼の両親のことを思い浮かべると、藤沢修の瞳はさらに暗く沈んだ。「父の言う通りだ。結局、俺は父と同じ道を歩んでしまったんだ」

松本若子の心は鋭く締めつけられ、彼女は俯いて黙り込んだ。

この世界では、教訓というものが人々の記憶に残ることはほとんどない。過去に多くのことが起きて、それが間違いであり悲惨な結果を招くと証明されているにもかかわらず、後の人々もまた同じことを繰り返すのだ。

それはもしかすると、人間の遺伝子に刻み込まれた根深い欠点なのかもしれない。たとえそれが間違っているとしても、人はそれを行ってしまう。

彼らの理屈では、そうすべきだと考えるからだ。

「でも、ひとつだけ違う点がある」藤沢修は続けて言った。「当時、俺の母は父を深く愛していた。その愛のために、彼女は心が引き裂かれ、陰鬱な日々を送ることになった。でも、俺たちは違う。若子、お前は俺を愛していない。だからこそ離婚した後は、前よりも幸せになれるだろう。お前も自分で言っていたじゃないか、この結婚生活にはもううんざりだって。そして今、お前は解放されたんだ」

「......」

松本若子は驚きで動きを止め、何も言えずにいた。

心が激しく痛み、胸の奥から窒息するような感覚がこみ上げてくる。

沈黙する彼女の目をじっと見つめ、藤沢修は微かに眉をひそめた。「お前は俺を愛していないんだろ?だから、俺たちは俺の両親とは違うんだよな」

この言葉は、先ほどのように確信に満ちたものではなく、どこか問いかけるような響きを含んでいた。彼自身も松本若子の目を見つめながら、わずかに疑念を抱いていた。

松本若子は突然、服の裾をぎゅっと握りしめ、拳を固く握り、手のひらには汗が滲んでいた。

藤沢修、私は何年もお前を愛してきたのに、お前はそれを知らなかったんだ。

もし、私が「愛している」と伝えたら、何かが変わるだろうか?お前は桜井雅子と別れて、私と一緒にいてくれるだろうか?…答えは「いいえ」だ。

なぜなら、お前は私を愛していない。

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